エンブラエル170 EMBRAER170

~ ブラジル製リージョナルジェット ~

 ボンバルディアをしのぐ勢いで、世界のリージョナル航空機市場を席巻しつつあるブラジル製リージョナル・ジェットEMBRAER(エンブラエル)。09年9月末現在、旅客ジェット7機種を市場投入、合計1,767機の確定受注を得ており、うち1,461機をデリバリー済みとなっている。(財)日本航空機開発協会の調査では、08年末時点での旅客機の就航機数は世界全体で16,000機弱、うちリージョナル・ジェット機の運航機数は3,970機なので、そのシェアの大きさが分かる。
 
 日本では09年2月、JALが76人乗り仕様のEMBRAER 170(エンブラエル170、略称E170)を初導入。09年末現在、JAL子会社ジェイエア(本社=県営名古屋空港内)が6機のエンブラエル170を運航しており、2010年度中には発注済の10機全てが揃う予定となっている。また、静岡空港を拠点とする鈴与グループのFDA(フジドリームエアラインズ)も、3機のエンブラエル(1号機、2号機はE 170の76人乗り仕様、3号機はE 175の84人乗り仕様)を発注、2010年1月末には3機目がそろう予定となっている。
 
 ブラジル製航空機と聞いて不安がる声が根強いが、客室快適性、静音性、安定性などさまざまな面で市場の支持を集め、業界からは「ヨーロッパ製と捉えるべき品質の高さ」(日本航空機開発協会幹部)と評価されるエンブラエル機のうち、ジェイエアが運航するエンブラエル170を紹介する。

エンブラエル170 EMBRAER170 E170 ERJ170 EMBRAER170

写真=朝日を浴びて動き出すエンブラエル170。県営名古屋空港にて。

 

エンブラエル170 EMBRAER170 E170 ERJ170 E170

写真=窓からの眺め。従来のリージョナル航空機を大幅に上回る客室快適性で、高い市場シェアを獲得している。

 

中型機並みの存在感

 エンブラエル170をまず特徴づけるのが外観。リージョナル航空機をはじめ小型機が、往々にして単調な外観をしているのに対し、E 170は上部が膨らんだ"逆三角形"の体型を持つ。この構造によりボーディング・ブリッジの装着が可能となり、大型国際空港で中大型機に混じって運用する際の利便性が上がった。
 何より、客室および貨物室に十分な空間を確保することが可能となり、客室の快適性、積み込める荷物量の増加など、旅行者へのサービスが向上したことは、E 170のヒット要因となっている。

EMBRAER170 E170 ERJ170 エンブラエル170 機体 エンブラエル170 機体

写真=エンブラエル170。小型機でありながら、「ボーイング737(B737)など中型機にも見劣りしない」(西川建人ジェイエア社長(当時))存在感を備えている。ボーディング・ブリッジのない空港でも、車椅子利用者などは専用のエレベータで搭乗できる。下の写真は、同じくジェイエアが運航する50人乗りリージョナル機CRJ 200(ボンバルディア製)。26席の違いながら、ボリューム感の差は歴然としている。

ボンバルディア CRJ200 ジェイエア ボンバルディア機  ボンバルディアCRJ200

 

快適性を追求した機内空間

エンブラエル170 機内 キャビン 客室

上下の写真とも、天井の高さに注目。床から天井まで2mあり、大半の乗客はリージョナル・ジェットにつきものだった、天井に頭をぶつけそうな圧迫感から解放されるのではないだろうか。通路幅も50cmと余裕を持たせ、後述する座席の快適性にも貢献している。

E170 EMBRAER170 Cabin 機内 客室

 

 客席は総革張り。腰かけると体全体がゆったりと受け止められ、包み込まれるように感じる。膝まわりも広く、疲れを感じさせない。
 アメリカ在住時に何10回とリージョナル・ジェットに乗った経験のあるという少年(12)は、「革張りのシートは初めて。アメリカの国内線に比べずっと快適だし、また乗りたい」と喜んでいた。また、地域FMラジオ局の局長は「この前アメリカの国内線に乗ったときは、両脇を大柄な客に挟まれ窮屈だったが、このシートなら同じ状況でもゆったりできる(※エンブラエル170は全席2列なので、実際には両脇を挟まれることはない)」と賞賛していた。

エンブラエル170 座席 E170 シート 乗り心地

 
写真=全席、2席×2列と余裕のある配列になっている。柔らかく包み込まれるような、ゆったりとした座り心地の良さは格別。

エンブラエル170 手荷物収納棚 機内 客室

 

 

 
写真=手荷物収納棚の広さも人気の理由

 

<ダブル・バブル構造>

 こうした客室快適性を高めている技術のひとつが、「ダブル・バブル」と名づけられたE 170特有の機体構造。下の写真のように、大小2つの円を上下に重ねた断面構造とすることで、客室の足元や窓際の空間面積を広く取ることを可能とした。ひとりあたりの客室空間はB737よりも広いという。

ダブル・バブル エンブラエル170 E170 Double Bubble

 

GE製エンジン

 エンブラエル170のエンジンは、GE(ゼネラル・エレクトリック)社製CF34-8E5。推力は14,000ポンド。離陸時には、滑走から浮上への滑らかな移行と、それにつづく上昇時の加速Gが、エンジンのパワーを実感させてくれる。戦闘機の整備士を務める乗客は、「エンジンの力で強引に地上から引き離す力強さを感じる。一方で離陸時の加速圧は、体に負担をかける戦闘機のものと異なり、心地よい」と快適さを噛み締めていた。

エンジン エンブラエル170 E170 ERJ170  ゼネラル・エレクトリック GE 航空機エンジン

上下の写真2点とも、E 170のGE製CF34-8E5エンジン。強力な推進力を誇るとともに、静音性にも優れる。

エンブラエル170 E170 離陸 テイクオフ EMBRAER170  E170 Take Off

写真=エンブラエル170離陸の瞬間。パワフルに上昇していく。
 
 

<JALとエンブラエル170>

 JALは現在、オプション5機を含む15機のエンブラエル170を発注済み。JALの「新しい国内線ネットワークの戦略機」(日本航空広報部)であり、2010年以降の羽田空港の発着枠の拡大を機に、小規模需要にも対応できる小型機を多頻度で投入することで、グループ全体で地方空港を結ぶ路線の強化を目指す。運航は全てジェイエアが担い、2010年1月末には県営名古屋空港内に新格納庫も開設する予定。

 

<エンブラエル社 EMBRAER>

 ボーイング、エアバスに次ぐ有力民間旅客機メーカーで、120席以下の小型機市場ではカナダのボンバルディア社と1位を争う、ブラジル有数の輸出企業。2008年の売上高は前年比21%増の63億3,500万ドル、純利益は同21%減の3億8,900万ドル。ブラジル本国のほか、アメリカ、フランス、ポルトガル、中国、シンガポールに主要拠点を有する
 
 エンブラエル170は、正式名称ERJ 170-100 STD。70~120席サイズのE-Jetsファミリー(エンブラエル170、175、190、195)の一員として1999年開発開始、2004年3月から実用化。緒元は次の通り。
 
 全長29.9m
 全幅26.0m
 全高9.9m
 巡航速度:マッハ0.82
 座席数:76席(JALおよびFDA仕様、基本は78席)
巡航距離:約3,100km

   

 
外部リンク
 
 JAL(日本航空)
 
 ジェイエア(JALグループ)
 
 FDA(フジドリームエアラインズ)
 
 EMBRAER(エンブラエル社サイト)